ハンドメイドでレザークラフトをやっています。合間にハーレーとワーゲンの空冷エンジンで遊んでます。そんなラブ&ピースなブログです。

2018年08月10日

小さな二匹の足音を追いかけて

  
 あれは5月の事だったと思う。

 久しぶりの森さんからの着信。

 とても元気のない声だった。


 『実はCOCOが亡くなりまして、昨日ROCOも後を追う様に亡くなりました。』


 返す言葉が見つからなかった。

 そして、お願いがあると言う。

 『ヤバスタ工房を紹介して欲しい。そしてSUGAR工房とヤバスタ工房にどうしても作って欲しい物があります。』


 小さな二匹の足音を追いかけて



 そうして出来たのが写真の物。

 何年もずっと闘病生活だったCOCOとROCO。

 やっと東京を眺めながら故郷の海に帰って来たね。

 いつも森さんと3人で散歩した思い出の南相馬の海岸へ。


 小さな二匹の足音を追いかけて


 可愛い顔している二匹の白い犬。

 左のちょっと大きい方がお兄ちゃんのCOCOで、右が弟のROCO。

 二匹の思い出を詰め込んだ物を毎日身に着けていたいと。

 
 少し自分の中で整理をしてからヤバスタの祐一に電話した。

 もちろん二つ返事。

 『やるしかね~だろ!!!』


 小さな二匹の足音を追いかけて


 6月のある日。


 森さんが辻堂にやって来た。

 
小さな二匹の足音を追いかけて



  作戦決行の日。

 作戦と言うほどじゃなくシンプル。

 ある程度イメージしておいて、後は話を聞きながらその場で朝まで掛かっても作って手渡す。

 ウチラはシンプルなのか?バカなのか?

 手先はちょっと器用だけど、やり方は不器用なのかも知れない。

 でもこれがウチラの考える最高だし、言ってしまえばこれしか出来ない。

 初めて会うヤバスタの祐一、レイサちゃん、シンヤ君の3人と福島から来た森さん。

 打ち解けるのに不思議な位時間は掛らなかった。

 まるでもう数年前からの知り合いのような懐かしさすらあった。


小さな二匹の足音を追いかけて


 森さんの腕には自分が数年間に作らせてもらったブレスレットがしっかり巻かれていた。

 この中にはCOCOとROCOの乳歯が埋め込まれている。

 『On Your Side』

 いつもお前たちと一緒にいる。

 どれだけ森さんがこの二匹を思っていたかなんて説明するまでもない。


 小さな二匹の足音を追いかけて


 夜から始めてとっくにお店の閉店時間過ぎても関係なかった。

 自分は二匹の歯と毛を包み込む革物。

 
 小さな二匹の足音を追いかけて


 祐一は遺骨の入った二つのペンダントトップを使ったシルバー加工。

 考える事じゃない。

 感じた事を形にできるかって事。


 俺達電話で話して誓ってた事があったんだ。

 『今までずっと物を作り続けて来たのは、いつかのこんな時の為なんじゃなかって。こんな時に力になれるの為の作り人でありたい。』


 小さな二匹の足音を追いかけて


 この夜の事を詳しく書くと書ききれない。

 常にみんなで号泣をこらえながら常に泣いていた。

 切なさを抑えながら思い出話を嬉しそうに話す森さん。

 ずっと革を編み込む自分。

 必死にシルバーと向き合う祐一。

 泣きながら歯を毛で包んでいるレイサちゃん。

 そんな姿を気を使いながら写真を撮り続けるシンヤ君。

 みんなやっている事は違いながらもみんなでCOCOとROCOの事だけを考えた。

 みんなで思いっ切り気持ち寄せ集めて、二匹と森さんを想った。

 信じられない不思議な事もたくさん重なった夜。


 小さな二匹の足音を追いかけて


 『物作りは想いや気持ちじゃない。物作りは金だとしっかり言える奴こそが本当のプロであり、一流だ。』

 そう聞いた事がある。

 少しだけ意味はわかる。

 でも、だったら俺たちはずっと二流で良いとすら思える。

 物作りには想いと気持ち大事だよ。

 それを叶える為に日々腕を磨けばいい。

 『そりゃ~金持ちになれないわけだわ!!』 って俺たちはいつも笑って話してる。


 小さな二匹の足音を追いかけて


 自分が手渡せたのは2時前位だったかな。

 みんなで夢中だったので良く覚えていない。


 小さな二匹の足音を追いかけて


 小さな二匹の足音を追いかけて


 特殊な塗料を使って擦れさせながらCOCOとROCOの毛並みを描いた。

 慣れない作業ながらも真鍮を削り出して作ったプレート。

 それを繋ぐチェーンは首輪に使っていた物。

 受け取った森さんも泣いてくれて、そして自分も泣いた。


 小さな二匹の足音を追いかけて


 中には二匹の犬歯を毛で包み込んで元々使っていたお守り袋に包んで封じ込めてあります。

 布と革なのでいつか中の毛は風化して形を変えて行くだろう。

 でもそれも大事な事。

 真鍮のプレートには 『アリガトウ』

 なぜカタカナなのかはわかる人にはわかるだろう。

 鹿紐の下にぶら下がる4本の真鍮パイプ。

 それに意味がある。


 小さな二匹の足音を追いかけて


 泣きながら包んで、話しながらCOCOとROCOの膨大な写真と寄り添ってくれたレイサちゃん。

 おかげでこんな物が作る事が出来たよ。

 ありがとう!


 小さな二匹の足音を追いかけて


 祐一のペンダントトップの加工が終わり、そこにレイサちゃんがレジンを流し込んで固める。

 それが3時過ぎだったような気がする。

 不思議とあの早寝早起きの森さんでさえ眠くなる事は無かった。


 小さな二匹の足音を追いかけて




 それから急いでみんなで閉店間際の居酒屋に駆け込んだのが4時前。

 今までの時間を取り戻すかのようにビールを流し込んだ。

 短い時間だったけど最高の時間と酒だったことは言うまでもない。


 小さな二匹の足音を追いかけて



 やり切った満足感に満たされた。

 みんなで乾杯も出来た。

 でも嬉しかったのはそれだけじゃない。

 こうして森さんの嬉しそうな笑顔を見れている事だ。

 今回、祐一、自分、森さん、レイサちゃん、シンヤ君。

 その誰一人欠けていても出来なかった事。

 みんなで作った物。


 小さな二匹の足音を追いかけて



 小さな二匹の足音を追いかけて



 最後はやっぱりお決まりの号泣。

 朝の駅前で大のオッサンで恥ずかしくもなく泣いた。


 小さな二匹の足音を追いかけて



 本当に夜からぶっ通しで作り続けて完全なる徹夜で始発に向かう。

 確かにこの時は眠くてボロボロだったけど、こんなに気持ちの良い朝はない。

 
 小さな二匹の足音を追いかけて



 祐一が作ったペンダント。

 この位置、傾き。

 そしてレジンで封じ込める前の森さんの涙の指紋の跡。

 これは世界中探してもお前にしか作れない。

 
 小さな二匹の足音を追いかけて



 そう。ここは3人でいつも散歩して遊んだ場所。

 懐かしい匂い。

 耳を澄ませば波の音に紛れて吐息が聞こえて来そうだ。


 小さな二匹の足音を追いかけて



 真鍮の4本のパイプの重なる微かな音は二匹の足音。

 コンクリートの堤防を走る爪の音。

 

 走ってるかい?



 遊んでるかい?



 良く頑張ったね。


 幸せだったんだなお前ら♪



 小さな二匹の足音を追いかけて



 風もない車の車内でどうしても森さんの方を向いてくるのはなぜだろう。

 見守ってくれているのかな?

 まだ甘えてるのかな?



 小さな二匹の足音を追いかけて



 最後にこのブログを愛犬であるCOCOとROCOの魂に捧げる。


 ありがとう!COCO、ROCO。

 そして作らせて頂いた森さんありがとうございました!

 続きはまた近々辻堂で…




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