シュガー(SUGAR)工房のLeather＆AirCool

　久々にレザー物の紹介です。と、言いたいところですが実はこのメディスンバッグは今どうなっているかわかりません。このバッグはこの震災での被災者の方に作った物です。あの恐ろしい大津波の被害により、今はどこかに埋まっているか、海の底にあるのかもしれません。だから『幻のメディスンバッグ』なのです。まさかこんな形で紹介するとは思ってもいませんでした。
　私の田舎である福島県浪江町請戸漁港。家の向かいの家に住むhideoさんという方が去年ハーレーを購入いたしました。私は田舎に毎年ハーレーで遊びに行っていました。それを見ていたhideoさんは毎年『ハーレー俺も買うぞ』と言っていました。そう言う人はたくさん見てきましたが、いざ大型免許を取ってハーレーを買うという人はほんのわずかな人だけ。『いつか必ずタバコをやめるぞ』とよく言っている人に限ってなかなかやめられない。みたいな感じ。
　それが去年の秋に行ったらなんと免許も取り、ハーレーのスポーツスターを購入していました。しかもピカピカの新車です。すごく嬉しそうで『どうだ！買ったぞ！』と自慢してました。『参りました』って感じでその日はずっとハーレーの話をしていました。
　その方の為に作らせてもらったのがこのメディスンバッグです。年末にすべてお任せでオーダーしてもらって、やっと納品したのが今月の初め。hideoさんは漁師なので、デザインとして波をイメージしたポイントを付けました。

とても気に入っていただいたようで、そろそろ暖かくなってきたことだしこのバッグを着けて乗るのを楽しみにしていました。
　そんな矢先の大地震、大津波、放射能汚染。幸いなことにhideoさんのご家族もみなさん無事に非難されたそうですが、家も車も、船も、そしてハーレーもこのバッグもすべて津波に飲み込まれてしまいました。先日電話をした時は『がんばってまた買ってやる！』と前向きで力強く話していました。原発問題でしばらく時間は掛かりそうですが復興への力強い足音が聞こえたような気がします。
　バッグはもちろん永久に無料保障期間中なのでまた作らせてもらいますよ。海と共に暮らし、波が好きで波のデザインのバッグを気に入ってくれていた人が、その波にすべてを飲み込まれる。なんかとても皮肉なことです。ただ海の男は最後まで海の男であり続けることでしょう。
　一日でも早い放射能問題の解決と、復興を心よりお祈りいたします。